印刷会社からみる小ロット文学出版への可能性 ~ page2019 カンファレンス資料より

 

 

小ロット文学とは何か

 

ここでいう「小ロット文学」とは、1部から本を制作する文学作品のことです。

 

世界でたった1つのオリジナル作品を気軽に1部から自由に制作することが出来るとすれば、素晴らしいことだと思います。

 

本記事ではそうした分野に対するニーズ・メリット・可能性・課題・今後について、印刷会社からの視点に立って論じてみます。

 

ニーズ

 

私が自費出版印刷分野に携わらせて頂いているなかで、こうしたものに一定のニーズがあることを理解しています。

 

通常、自費出版の小説本を印刷する場合、オフセット印刷ですと最低でも50部からの制作、デジタル印刷機は10部からの制作が通常です。

 

今回のテーマではさらに部数の少ないケースを論じています。

 

その背景にはデジタル化が進むことによって、誰もが作品を通じて情報発信をすることが出来る環境になったことがあります。

ブログや動画などのメディア同様、個人で文学作品を発信したいという作家様の裾野における潜在的ニーズは高いものがあると推測することが出来ます。

 

メリット

 

1部から制作出来る本に関するメリットについては2つあります。

 

・在庫リスクを抱えなくて良い

・多品種の本を出版出来る

 

自費出版のリスクは在庫を抱えてしまうことにあり、1冊からの制作によりそうしたリスクから解放されることが期待されます。

またその分、多くの本を出版出来るというメリットがあります。

 

印刷会社からみる小ロット文学への可能性

 

・1部のみ制作などの極小ロット印刷については、一定のニーズが存在する。

・実現すればさらにロングテールのビジネスモデルに転換出来、出版・印刷業が進化することが出来る可能性を感じる。

・同人関連に関わるものとして、出版という形で発信をしたい作家様はとても多いと感じているので市場創出の可能性はある。

・売上ベースの商業目的というよりコミュニティづくりから発展するかたちが良いのではないか。

 

印刷会社からみる小ロット文学への課題

 

・印刷技術としての極小ロット制作は利益ベースにはまだ乗っていないと感じる

・本作りに関しては制作段階で見た目以上に手間がかかるので、web to printを利用した標準プラットフォームが必要

 

印刷会社からみる小ロット文学への今後

 

・個人が文学を通じて情報発信していく流れは強まっていくのではないか

・それに伴い印刷製本技術も進化してゆく

・ウェブと紙の役割分担が明確になっていく

 

まとめ

 

本記事では小ロット文学印刷への可能性について書かせて頂きました。

 

 

 

 

投稿者プロフィール

菊地登志雄
菊地登志雄
1971年11月生まれ。O型。埼玉県生まれ、東京都文京区在住。趣味は旅・食べること。